経営統合を長期及び短期的視点で考える
12/18、ホンダと日産の経営統合の協議が実施されていることが分かりました。この統合で、販売台数は800万台を超える、世界3位を狙える世界有数の自動車メーカーが誕生します。今回は、なぜ経営統合をする必要があるのか、どのような影響があるのかをホンダ側の目線で解説していきます。
EV自動車販売の低迷
中国は世界最大のEV市場であり、EVの世界シェアが約50%以上を占めるため、ホンダと日産にとっては非常に重要な市場となります。しかし、その中国市場は価格競争によって苦戦しています。中国政府の継続的な補助金等の政策により中国企業は200万円でEVを販売することが可能になりました。現状のホンダ、日産の技術とサプライチェーンではこの価格競争に勝てず売上が悪化しています。さらに、近年景気低迷が深刻な中国では安さが重視されることも相まって、日産、ホンダは人員削減、生産能力の削減、および工場の閉鎖といった撤退を余儀なくされています。
ホンダのEV自動車への方向性
ホンダは2030年までに約10兆円をEV関連に投資することを発表しています。EV市場で戦うには中国市場は避けて通れません。つまり、「低コストEV の展開力」「高い値段でも納得できる高付加価値」の2つの軸で戦う必要があります。この2点を底上げするには日産との統合が合理的と判断し、10兆円の投資の一部として動いていると考えられます。
統合のメリット
低コストEVモデルと高付加価値モデルが今後のEV市場ではポイントになります。特に現状の中国市場で戦うためには低コスト化が必要不可欠です。今回の統合メリットの1つとして日産の製造を含めたEV技術を組み合わせスピード感のある低コストモデルを実現可能になる点があげられます。そして、低モデル品でブランド力や販売網を確保している間に、本命の高付加価値モデルの開発にじっくりと腰をすえることができる点がホンダ側の理想だと思います。まずは、なぜスピード感のある低コスト品が作れる可能性があるかを説明します。
プラットホームの共有化
ホンダは基本構造や設計のベースであるEV用のプラットホームを完全自前で保持していません。従来の内燃機関車とは異なるため、バッテリーやモーターを最適配置したEV専用プラットフォームが必要不可欠であり、ホンダは完全自前のものを設計する必要がありました。一方で、日産は自前のプラットホームを既に持っており日産のEV車での実績もあります。今回の統合で同じプラットフォームを複数の車種で共有することで、設計や生産のコストを大幅に削減することができます。
既存工場の相互利用
両社が現在保有する工場を共有し、車両モデルや地域ごとに生産を分担し、効率化することが考えられます。特に、ホンダはEVの製造に関してはまだ発展途上のため、EV用の工場やラインの最適化がまだ必要な状況でした。そこで、現状のEV自動車を製造している日産の工場にホンダのEVの製造を移管し分業化することによりホンダはEV製造ラインの構築費用を大幅に削減できます。さらに、日産のEVの既存工場の稼働率が改善するため、費用対効果も向上します。地域需要に応じて、近隣のお互いの既存工場で生産も行うことで、新規工場建設にかかる数百億円のコストも削減できます。
上記の取り組みにより、開発コストや工場の建設コストなどが大幅に削減できます。また、互いのサプライチェーンをフル活用することで中国企業にも負けない低価格でも利益がでるシンプル仕様のエントリーモデルを作ることが可能になります。加えて、コストを削減で浮いた資金で全個体電池、充電技術、高効率モーターなどの研究開発費用に当てることができます。両者ともに上記の各分野の研究に力を入れているため、協力し合うことで今よりも短期間で実用化できるかもしれません。これらの取り組みにより、他にはない高付加価値モデルを作りEV業界のゲームチェンジャーになるポテンシャルが高まります。
ホンダの株価の大幅安の理由
ホンダは今回の経営統合が発表された後、年初以来の大幅安値を更新しました。これは日産の業績の悪さに起因しています。日産の24年9月までの営業利益が前年同期比90.2%減329億円となり、営業利益率も、5.6%から0.5%に急落しました。当期純利益は93.5%減の192億円、通期では数千億円規模の最終赤字になるとの予想も出ている状況です。業績悪化の最大の要因が、主要市場と位置付ける北米と中国での苦戦です。特に北米での販売台数を維持するための販売奨励金への依存が高まり、北米事業の営業損益は2414億円の黒字から41億円の赤字に転落しています。この赤字が続けば資金繰りが厳しくなり、倒産も視野に入る状況です。イギリスのFT紙では日産の猶予は12~14か月と言われています。ホンダ自身も販売台数に伸び悩み当初より下方修正し苦戦しているのにも関わらず、赤字で財務状況も厳しい日産を受け入れるとなると株主からの評価は冷ややかになるのは明白です。
短期的な視点
短期的視点で考えると経営状況が好調ではないホンダが赤字かつ財務が不安定な日産を迎え入れることはホンダの利益を大きく押し下げる要因です。また、冒頭で述べたEV自動車におけるメリットは直ぐに成果はでにくく、どんなに早くても1年はかかると考えられます。また、台湾の鴻海が日産に敵対的買収を仕掛ける可能性が高いです。今、中に浮いている仏ルノーが保有する約36%の日産株を相場より高値でホンダが購入せざるおえないことが容易に考えられます。その結果、ホンダの利益はさらに押し下げられます。そのため、今後の決算発表も大幅な下方修正の可能性が高くしばらくはホンダの株価の下降トレンドは続くでしょう。
総評
今回のホンダと日産の買収は今後のEV自動車の躍進にむけて必要不可欠な投資であると考えます。日産の悪化した財務状況や鴻海の敵対的買収の可能性はホンダの利益を押し下げるデメリットです。ですが、個人的には企業の持続的な成長を考えるとむしろメリットの方が大きいのではと考えます。ただし、トランプ政権によるパリ協定脱退やメキシコからの輸入品への大幅関税の追加といった要因がEVそしてドル箱である北米市場に大きな悪影響を与えることは明白です。そのため、EV投資メリットの効果が想定より遅くなるのではという懸念もあります。トランプ氏の動向も今後さらなるポイントになりそうです、、
ではでは