投資のCOFFEE BREAK

初心者でも分かるように投資についてゆったりとお話します。週3の更新を目指してます。コーヒーブレイクがてらにどうぞ。

ゴールドとシルバーの急騰②~シルバーの最高値更新は金融危機のシグナル

貴金属と金融危機の関係を紐解く

ゴールドとシルバーの急騰①ではゴールドが最強の安全資産であること、シルバーはゴールドより安全資産としては優れていないことを解説しました。現状、ゴールドは史上最高値を更新しています。これは米国政府の過去最大レベルの財政赤字や米銀行の歴史的な負債額がドル通貨の対外的な信用と価値の低下を引き起こした結果です。この内容は下記記事に詳細を記載しています。

mametmamero.hatenablog.com

シルバーの価格上昇

ゴールドは安全資産用途で買い圧力が強まっていますが、シルバーも12年ぶりの高値を更新しました。この理由をゴールドとの相関、インフレ対策の観点からご説明します。

ゴールドとの相関

シルバーは株ともゴールドとも相関がある二面性の性質があります。これは前者はリスクオン、後者はリスクオフ時に見られる傾向です。ゴールドとの相関は「シルバーの代替効果」が大きく影響してきます。株価との相関は前回説明しましたので割愛します。詳しくは下記記事をご覧下さい。

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代替効果

ドルなどの通貨の信用低下により、まずゴールドが買われます。これより、急激に需要が増加するため価格が高騰します。まさに、最高値更新をしている今の状況です。高騰しすぎて手が届かなくなると、自身が購入できる範囲の代替品を購入するようになります。シルバーはゴールドほどではないものの、長い歴史の中で貴金属や貨幣としての扱われ、世界共通の価値があります。そのため、投資家は比較的安価なシルバーを選ぶことが多くなります。

インフレ対策

不景気の懸念が高まると、中央銀行量的緩和や利下げを実施すると予想されます。その結果、通貨供給が増え、インフレが進行する可能性があります。シルバーは通貨より価値が下落しにくい実物資産であるためインフレヘッジとして買い圧力がかかります。また、現在進行中の米大統領選では両候補とも雇用と経済を上向かせるためドル通貨を市場にばらまくことを宣言しています。 ハリス氏の税制・支出計画では10年間で3兆5000億ドル、トランプ氏は約2倍の7兆5000億ドルになると予想されています。特にトランプ氏が再選すると、米国は再びインフレに傾くことが危惧されています。

シルバーの更なる高騰

現在のシルバー価格の上昇はゴールドの代替需要とインフレヘッジの2つが重なったことが大きな原因だと分かりました。そして、実はここからもう一段階、シルバーが急騰し、ゴールドの上昇を越える上昇率に達する可能性があります。これは、金融危機の影響をうけて銀行がシルバーに対するショートポジションを解消することに起因します。

銀行のショートポジション

シルバー市場は他の商品市場に比べて規模が小さいため、価格操作が比較的容易であると考えられています。多くの顧客に対して先物オプション取引を実施している銀行は価格が上昇すると損失が大きくなります。そのため、銀行はシルバー市場で売ること(ショート)で価格を抑える戦略を取っており、シルバーの価格は比較的に低く抑えられています。多くの経済アナリストはシルバーは供給不足である現状にも関わらず、それに見合った価格ではないと見解を示しています。

ショートスクイーズ(強制的な買い戻し)

金融危機などで市場が不安定になると、シルバーが上昇しやすくなるため、ショートポジションを持っている銀行は損失が発生していきます。価格の上昇は青天井であるため、損失は無限大まで拡大します。また、それでもポジションを維持するためには追加の証拠金の支払う必要があります。シルバーの需要が高まり、上昇が続く場合、銀行はポジション維持のために証拠金を払い、解消しない限り損失はどんどん拡大する状況です。金融危機に陥ると、不良債権の対応や市場の貸し渋りの対応に追われ現金や手元資金が減り自己資本比率は悪化します。つまり、ショートポジションによる損失拡大を無視できない、もしくはすでに証拠金が払えなくなるほど財務が悪化した場合にポジションが解消されシルバーを大幅に買うことになります。

連鎖的なポジション解消

不況や信用低下などで銀行はショートスクイーズをしなければいけない状況に追い込まれるとシルバーが大幅に買われ価格が急騰します。急騰すれば、まだショートポジションをとっている銀行の損失は指数的に拡大します。その結果、最初は少数のポジション解消だったものの、他の銀行も連鎖的にショートスクイーズを実施し、短期間で大量の買い戻しが行われ価格は急騰します。

貴金属と金融危機の関係

例として、2008年のリーマンショックがあげられます。金融危機の2年ほど前から貴金属が上昇し始めました。最初にゴールドが上昇、遅れてシルバーも上昇しました。リーマンショック発生の1年付近でゴールドとシルバーは最高値を更新しました。そして、リーマンショックの直後、銀価格は一時的に大きく下落したものの、その後に大幅に回復し最高値を記録し、高騰率はゴールド超えていました。これは銀市場でショートスクイーズが発生したためです。

現状の相場

今回のシルバーの上昇は通貨の信用低下とインフレ再発などの先行き不安に起因します。ゴールドの最高値が更新された今、次にシルバーが最高値を超えると今までのアノマリーから金融危機の懸念が大いに高まると考えられます。つまり、シルバーの最高値更新は金融危機への警告シグナルです。今後はシルバーの価格上昇を定期的にウォッチし、最高値更新が間近になれば撤退することも必要だと思われます。リスクヘッジの実施と定期的な資産管理が重要です。決して今の相場を楽観視してはいけないと感じています。

 

ではでは